イグリデュールJ350 - 材質データ

図01: 許容PV値 - イグリデュールJ350製スライドベアリング(肉厚1mm)、無潤滑、対スチール鋼製軸、温度+20°C、スチール鋼製ハウジング内に組込み

X = スライド速度 [m/s]
Y = 荷重 [MPa]

イグリデュールJ350は優れた耐摩耗性、耐熱性を兼ね備え、幅広い用途に対応するイグリデュール材質です。

図02: 最大推奨面圧 - 温度条件の変化 (60 MPa 、20 °C)

X = 温度 [°C]
Y = 荷重 [MPa]

図03: 変形 - 　荷重と温度

X = 荷重 [MPa]
Y = 変形 [%]

機械的特性

最大推奨面圧は、材質の機械的特性を示します。 したがって、摩擦特性への言及はできません。 温度上昇と共に、イグリデュールJ350製すべり軸受の圧縮強度は低下します。 図02は、この関係を明確にしました。

イグリデュールJ350製スライドベアリングは、中～高荷重の使用に適しています。 図03は、温度による変形を示します。 ここでは、短時間の負荷による材質挙動がわかります。 さまざまな周辺温度による差は、60 Mpa程度から明確になります。

最大滑り速度

m/s	回転	揺動	直線
連続	1,3	1	4
短時間	3	2,3	8

表02: 最大スライド速度

許容滑り速度

イグリデュールJ350製スライドベアリングは、低～中速の回転および振動使用に適しています。 磨耗率はしかしながら、回転使用時に優れた値を明確に示します。 リニア使用でも、イグリデュールJ350は優れたベアリング特性を示します。

イグリデュールJ350	使用温度
下	-100°C
最高、長期	+180 °C
最高、短期	+220 °C
抜け止めが必要な温度（これを超えた場合）	+140 °C

表03：温度限界

温度

ベアリング内部の温度も、ベアリング磨耗に影響します。 イグリデュールJ350軸受の摩耗速度は、高温環境ではほとんど変わりわません 磨耗は温度+100 °Cで、むしろ一部減少します。 +140℃以上の高温環境では、ベアリングの抜け止めをする必要があります。

図04: 摩擦係数とスピード、 p = 1 MPa

X = スライド速度 [m/s]
Y = 摩擦係数μ

図05: 摩擦係数と荷重、 v = 0,01 m/s

X = 荷重 [MPa]
Y = 摩擦係数μ

摩擦と磨耗

無潤滑運転で鋼製軸と組合せた場合のイグリデュールJ350の摩擦係数は非常に良好です。 表面速度が高くなるにつれて摩擦係数が低くなります。 これが、高速で連続使用した場合のベアリング寿命に影響を与えることになります。 図04がこの関係を示します。とくに荷重が2 Mpaを超えた回転使用で、イグリデュールJ350製スライドベアリングは他のベアリングの値より上回っています。

図06: 摩擦係数、軸表面変化(軸 S50c)

X = 軸粗度Ra [μm]
Y = 摩擦係数μ

軸材質

図06および07は、さまざまな軸材質使用による試験結果(抜粋)を示します。 イグリデュールJ350製スライドベアリングは、すべてのスライドペア（組合せ）に合致します。 磨耗データを見ると、どの組合せが最も優れているかが明確になります(イグリデュールJ350 対 V2Aステンレス鋼)。 ベアリング材質の中でも、組み合わせとしてむしろ難しいステンレス鋼(V2A)と組んで最良の磨耗率を得られる材質は多くありません。 抜群に磨耗値が優れることは、陽極硬化処理アルミニウム製軸でも見せています。 ご使用予定の軸材質がこの試験結果に掲載されていない場合には、どうぞ直接お問い合わせください。

イグリデュールJ350	無潤滑	グリス	油脂	水
摩擦係数μ	0,1–0,2	0,09	0,04	0,04

表04: 摩擦係数 イグリデュールJ350対スチール鋼 (Ra = 1 μm、50 HRC)

媒体	耐性
アルコール	+
炭化水素	＋ ～ 0
グリス、油脂、無添加	+
燃料	+
希釈酸	+
強酸	＋ ～ 0
希釈アルカリ	+
強アルカリ	+

+ 耐性あり      0 条件付で耐性あり      - 耐性なし 表05: イグリデュールJ350の化学品耐性

電気的特性

イグリデュールJ350製スライドベアリングには、電気絶縁性があります。

比容積抵抗	> 1013 Ωcm
表面抵抗	> 1010 Ω

耐薬品性

イグリデュールJ350製スライドベアリングは希釈酸、アルカリ、洗浄剤、潤滑剤への耐性があります。 イグリデュールJ350が腐食を受けるのはエステル、ケトン、塩化水素、芳香族、高極性洗浄剤です。

放射線

イグリデュールJ350 すべり軸受は、強度 2 x 10² Gy までの放射線に対する耐性があります。

耐紫外線性

イグリデュールJ350製スライドベアリングは、紫外線に条件付で耐性があります。

真空

真空では、イグリデュールJ350製スライドベアリングは非常に微量のガスを放出します。 真空では、乾燥したベアリングのみが使用可能です。

最大吸湿率
於 +23 °C/50 %相対湿度	0,3 水-%
最大吸水率	1,6 水-%

表06: 湿度吸収率、イグリデュールJ350

図10：吸湿率
 
X = 湿度吸収 [重量%]
Y = 内径Øの縮小 [%]

吸湿率

イグリデュールJ350の吸湿率は少なく、標準的スライドベアリング使用では考慮しなくてよいほどです。 飽和状態でも、イグリデュールJ350は1.6 %以上の吸収はしません。

径 d1 [mm]	軸 h9 [mm]	イグリデュール J350 E10 [mm]	ハウジングH7 [mm]
3まで	0 - 0,025	+0,006 +0,046	0 +0,010
> 3 ～6	0 - 0,030	+0,010 +0,058	0 +0,012
> 6 ～10	0 - 0,036	+0,013 +0,071	0 +0,015
> 10 ～18	0 - 0,043	+0,016 +0,086	0 +0,018
> 18 ～30	0 - 0,052	+0,020 +0,104	0 +0,021
> 30 ～50	0 - 0,062	+0,025 +0,125	0 +0,025
> 50 ～80	0 - 0,074	+0,030 +0,150	0 +0,030

表07：圧入後の公差（ISO 3547-1による）

組込み公差

イグリデュールJ350製すべり軸受は、公差hで設計した軸（最小でもh9を推奨）に対応する標準ベアリングです。 ベアリングは H7公差で圧入するよう設計されています。 公称寸法で受け穴に取付けた後、ベアリング内径は公差F10で自動的に調整されます。 特定の寸法については、公差は肉厚によって異なります（製品概要表をご覧下さい）。